関わった人々を幸せにする 和歌山市のパン屋さん

和歌山市に店を構える、「ベーカリー チックタック」。地元の方々から一流シェフまで、幅広い方々から愛されています。

今回は、オーナーの輿石紘一さんに、お店に対する想いについて伺ってきました。

転機となった移住

東京で約13年間働いていたという輿石さん。パン屋さんで働かれていたのかと思いきやそれは最後の3年間で、フランス料理店にて長年腕を振るわれていました。

そんな輿石さんの転機となったのは、移住。今から4年ほど前に、奥さまの仕事の都合により和歌山市へ移住することになりました。

移住と聞くと身構えてしまうこともあると思いますが、輿石さんに当時の想いを伺うと、「不安よりもワクワクする想いが強かった」とのこと。新しい可能性に胸を膨らませ、新天地へと辿り着きました。

自分の店を持つということ

移住後、輿石さんはFAVORITE COFFEEというカフェで、3年間働きました。
勤務先としてこちらのお店を選択した理由は、その経営者にありました。

FAVORITE COFFEEの経営者である丸田さんはカフェだけではなく、中華そば「丸田屋」というラーメン屋さんを数軒経営されています。
将来的に自分の店を持ちたいと思っていた輿石さんは、その姿に感銘を受け、「この人のもとで働きたい」と思い、連絡に至りました。

歳が割と近かったということもあり、打ち解けるまでにそれほど時間を要しませんでした。師匠のもとで働きながら経営についても学び、自分の店について思いを巡らせるようになりました。

パン屋さんを選んだ理由

店舗と一言で言っても、たくさんの形態があります。ましてや輿石さんはフランス料理店で働いていた期間が長いのに、多くの選択肢の中でなぜパン屋さんに至ったのか…。

その理由は、人を育てて組織化しやすい(マニュアル化しやすい)ということでした。

加えて、パン屋さんの雰囲気が好きだともおっしゃっていました。
私も学生時代にパン屋さんでバイトをした経験がありますが、パン屋さんに来るお客様って、とても穏やかなんですよね。そういった日常の些細な幸せが生まれる場所の一つに、パン屋さんが挙げられるのではないかと思います。

ベーカリー チックタック、オープン

そのような経緯を経て、2021年3月にオープン。主婦層を中心に、人気の高いパン屋さんとなっています。

チックタックというかわいらしい店舗名は、フランス料理店をヒントに名付けられました。フランス料理店はゆっくり食事の時間を楽しんでいただくために、時計が置かれていないことがあります。しかし、パン屋さんはその反対で、時計が命。1分、1秒の違いで、出来上がりが全く違います。

どちらにも共通して言えることは、時を大切にしているということ。
そして、かわいらしい響きにも惹かれ、「チックタック」と命名されたそうです。

「おすすめ商品は何ですか?」と尋ねると、少し悩まれていた輿石さん。

食への探究心が素晴らしく、パン作りに使う食材も国産に限らず、おいしいものだったら外国産もあり。品質はもちろんのこと、選ぶポイントは生産者だと言われていました。気になる食材があったら、まずは生産者に会いに行く。そこから決定していくと、話されていました。

そのような熱い想いを持たれている輿石さんですが、定番商品が作れないということが現在の悩みだとおっしゃっていました。食パンやカンパーニュなど、常時陳列されている定番商品でも、日々改良を重ねているのだとか。

「日によって言っていることが違うので、スタッフは混乱しますけどね」と、笑って話されていた輿石さん。

より良い商品を目指して、現在も邁進されています。

みんなが幸せになるパン屋さん

輿石さんにこれからの目標についてお伺いすると、関わった方々が幸せになれるような場所にしていきたいとおっしゃっていました。

お客様や関わってくれるスタッフを幸せにすることはもちろんのことですが、生産者、卸業者さんのおかげでパン作りができる。そういった方々にもリスペクトの想いを込めて、今後もしっかりと対価を払っていきたいと話してくださいました。

「三方よし」

商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる、近江商人の哲学が根づかれているのだと感じました。

関わった方々を幸せにする、パン屋さん。
和歌山市にお越しの際には、是非立ち寄ってみてください。

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