食の大切さを、子どもたちに
近年、よく耳にするようになった「オーガニック」という言葉。
大人のみならず、本来は子どもにこそ必要なものですが、オーガニック給食が学校等で導入されているケースはごく稀です。その背景には、安定的な流通の難しさやコストがかかること、周囲の方々の理解が難しいことなどが挙げられます。
せいわ保育園では自然保育だけではなく、オーガニック給食の取り組みもされています。前回の記事に引き続き、園長の肥田秀子先生にお話を伺いました。
オーガニック給食を導入したきっかけ
肥田先生がせいわ保育園に、オーガニック給食を本格的に導入しようと思ったのは、今から約2年前のこと。岐阜のある団体がオーガニック給食を国に懇願しているということを、SNSを通じて知りました。同じ県に同じ志を持った方々がいるということを知り、とても嬉しい気持ちになったのだそうです。
その取り組みに感銘を受けた肥田先生は、園にお招きし、勉強会を開催しました。
勉強会の中で最も印象に残ったのは、「発達障がいの子は、薬はいらない」ということ。
近年、保育の現場や世間的に見ても、発達障がいの特性を持つお子さんが増えています。もちろん先天的な事柄(脳機能の障がい)が要因だとされていますが、その他にも生活習慣や食生活などが影響しているケースもあると考えられています。
発達障がいの子が増えている理由の一つに、添加物・加工品の過剰摂取が挙げられています。恐ろしいことにそれは後世へと引き継がれるもので、自分の子どもや孫、その次の世代へと受け継がれていきます。(発達障がいの子の割合の推移から見ても、この見解は強ち間違いではないと思われます)
さらに薬について言及していくと、薬を服用することによって症状が緩和するということは確かにあると思います。しかし、その分依存性も高く、常に薬を服用しなければならない状態を作り出すという悪循環に陥ってしまうこともあります。
「食べたもので身体を作られている」ということをお話の中から改めて感じ、できることから始めてみようと思い、オーガニック給食の導入に至ったのだそうです。
せいわ保育園の取り組み
せいわ保育園のオーガニック給食の取り組みをご紹介したいと思います。
無農薬米、野菜、添加物なしの調味料を使用しています。加工品はできる限り使わず、アレルギーの起きやすい乳製品や卵の使用も控えています。
献立を見てみるとパンや麺の日がごく僅かで、ほとんどは米を主食としたメニューとなっています。パンは月に一回おやつに出る程度、麺は国産小麦で作られたものを使用しています。
おやつもせんべいや昆布など、素材のそのものを感じられるようなものが多く、一般的な保育園のおやつとしてよく登場するヨーグルトやプリンなどの記載はありませんでした。
献立を作られている栄養士さんは、週2回ほど園に来て、発注等を行っています。月に1回、献立について話し合う給食会議が開かれており、子どもたちにとってよりよい給食を提供できるよう尽力されています。
その他にも、野菜の栽培やクッキング保育などの食育活動にも力を入れています。田植えや稲刈り、餅つきや味噌作りなど、地域の方々と連携した活動もせいわ保育園の魅力の一つです。
また、保護者の方にもお便りなどを通して、食に関する情報を発信されています。偶然、私が目にしたお便りが「菌ちゃんふりかけ」に関する内容で。(詳しくは、こちらをご覧ください)
私自身も1年程前に信頼している方から教わり、生活の中に取り入れていたものだったので、「これ、いいですよね!」と思わず共感してしまいました。(外食が多い私の健康を維持できているのは、もしかしたらこのふりかけのおかげかもしれません。笑)
今は完全なるオーガニックではありませんが、一つ一つできることを増やしていきたいとおっしゃっていました。子どもたちの心身の健康のために何ができるのかを、日々考えられています。
食の大切さを伝えていく
肥田先生に今後のビジョンについてお伺いしたところ、食の大切さをもっと多くの人に伝えていきたいとおっしゃっていました。
保育園単位だけではなく組織で勉強するということが大切で、現在もそういった取り組みをされています。
直近の予定ですと、令和5年9月17日(日) 瑞浪市総合文化センター3階講堂&展示室で行われる「オーガニックまつり」。午前は、国光美佳先生による心と身体によい食事の摂り方等の講演、午後は、ミネラルみそ玉作りのワークショップが開催されます。
地元農家さんをはじめ、県内外から30店舗以上が出店する「オーガニックマルシェ」も同時開催。興味のある方は、せいわ保育園までお問い合わせください。
編集後記
最後に、肥田先生のお話で私が個人的に心に残ったことをご紹介します。
オーガニック給食を取り入れる際に難しいと思ったことは、予定通りにはならないということ。
農薬を使われていないということで、野菜に虫や土がついていたり、サイズが不揃いだったりすることもあれば、収穫の時期や状況、天候によっても左右されるので、必要な食材が手に入らないこともあります。そんな時は献立を変更したり、近所の八百屋さんで代用を探すなど、臨機応変な対応が必要不可欠だということをおっしゃっていました。
自然の中で生きる私たちにとって、従来では普通のことだとされてきました。しかし、それを普通だと思えない人々が、今のこの世界には数多く存在します。
手軽さや便利さ、安さや変わらないものの裏側に、本当に大切なものが隠れています。
まずは、自分や大切な人から。そこに気づくきっかけを与えていくことが大切だと思いました。