国境を越え、人々を救う。ウィズアウトボーダーの挑戦
世界には様々な国があり、人々はそれぞれの地で生活を営んでいます。
医療という観点からみると日本は恵まれた国であり、清潔感のある空間で、必要な時に、必要な医療サービスを受けることができます。
しかし、世界を見渡してみると、そのような国ばかりではありません。劣悪な衛生環境や乏しい医療器具、低い技術水準や貧困等によって、救えるはずの命が消えてしまうといった状態の国も存在します。
今回は、そのような医療支援を必要とする方々に国境を越えて支援する、一般社団法人 ウィズアウトボーダーの取り組みについてご紹介します。
設立の背景
ウィズアウトボーダー設立の背景には、口腔外科医 岩田雅裕さんの活動が挙げられます。
岩田さんがどのような思いで、どのような過程を経て活動に至ったのか、お話を伺っていきたいと思います。
始まりは、1997年。
当時勤務していた大学病院に、中国から留学生が来ました。
留学期間が終わって帰国した彼から、突然のSOS。手術(当時は日本の医師免許でも可能でした)をするために、中国を訪れました。
一度きりのつもりでしたが、翌年も、その翌年も訪れることに。(中国は新型コロナウィルスが蔓延するまで、毎年訪れていたのだそうです)
内容はその時々で異なりますが、病院での手術や学会での特別講演等をされていました。
時を同じくして、現在の主な活動拠点であるカンボジア。
初めて訪れたのは、1999年でした。
活動を知っていた知人から誘われたことがきっかけで、カンボジアの情報や状況が全くインプットされていなかった岩田さんは、現地の環境に衝撃を受けたのだそうです。
帰国してから、自分に何かできることはないかと考え、同じ年(1999年)に、もう一度カンボジアへ。
それから現在まで(新型コロナウィルス蔓延期間は除く)、医療支援や現地の医療技術の発展に尽力されています。
現在はカンボジアやラオス、スリランカなど、支援で訪れる国は多岐に渡ります。
国々に共通するのは、途上国で医療が発達していないということ。医療の技術だけではなく、それ以前に設備や環境が整っていない場所も多々ありました。
その背景に挙げられるのは、貧困問題。
NGOなど治療費がかからない病院もありますが、その一方でお金がないと治療を受けられない病院も存在します。
治療費を用意するために牛を売ったり、交通費を節約するために乗り合いで来たり、病院まで来て治療費が足りずに諦めて帰ってしまうなど、様々な情景を目の当たりにしました。そういったことを避けるため、岩田さんの自己資金を用いて、必要な人に必要な医療が届くようにと支援をされていました。
しかし、一人の力では限界があります。
この活動を知ってもらい、より多くの医療困窮者を救いたいという思いで立ち上げたのが、一般社団法人 ウィズアウトボーダー。2015年10月31日、岩田宏美さんによって設立されました。
ウィズアウトボーダーの取り組み
ウィズアウトボーダーは具体的にどのような活動をされているのか、代表理事 岩田宏美さんにお話を伺いました。
まず、主な取り組みとして挙げられるのは、現地の患者さんへの支援です。来るまでの交通費や入院費、点滴や輸血代、救急搬送の際の費用など、より良い治療を受けられるように援助をされています。
直接的な支援だけではなく、環境整備にも尽力されています。
2019年には、クラチェ州立病院 産婦人科病棟内にトイレ、シャワールーム、洗面所を建設するために、クラウドファンディングにも挑戦されました。
目標金額80万円を見事に達成。
ネクストゴールとして、布ナプキンを普及させるプロジェクトにも挑戦されました。
近年では、女性ならではの着眼点を活かした取り組みもされています。
これからの挑戦
国境を越え、様々な活動をされてきたお二人に、今後の展望についてお伺いしました。
(岩田さん)20年くらいかけて作り上げてきたものが、一気にスタートに戻ったという感覚があります。情勢的に今後は行くことが難しいと思われる国もあるので、どこまでできるのかを見極めて支援していくことが大切だと考えています。
(宏美さん)今までの活動を継続しつつ、環境設備や布ナプキンの普及をしていきたいです。女性や子どもに関わる支援にも力を入れていきたいと思います。
現在は、2歳になるお子さんと一緒に現地を訪れています。
フリーランスの口腔外科医として活動されている岩田さんは、呼ばれた場所に行くというスタイルで、日本にいる際も転々とされています。お子さんはこの歳にして、131回も飛行機に乗っているのだそうです!(2023年4月現在)
うち8回は海外で、言葉は話せないなりに、現地の子どもたちともコミュニケーションを図っています。今後は、お子さんを通じた新たな展開にも着目されているとのことです。
今回は、ウィズアウトボーダーの設立に至った経緯とその取り組みについて、お話を伺いました。
「自分が楽しくて満足できているからこそ、人に与えられる」という言葉が、私の中で特に印象に残っています。
時間・お金・労力…様々なものを駆使して、このお役目を果たされていると思われますが、その中でも楽しみを見出そうとする姿が、とても素敵だと思いました。
素敵な活動が末永く続けられますように…。
そして、一人でも多くの方にこの活動を知ってもらえますように…と、私は心から願っています。
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