新しい教育の形。糸魚川市が実践する親子ワーケーション

今回は、糸魚川市の取り組みの一つである親子ワーケーションについてご紹介していきたいと思います。

ワーケーションという言葉が世間に浸透し始めてから、〇〇ワーケーションという言葉をよく耳にするようになりました。温泉ワーケーション、農村ワーケーションなど、様々な切り口があるなと私自身も感心しながらその情報を追っていました。

そんな中、糸魚川市を訪れた際に耳にした親子ワーケーションという言葉。「子どもと一緒に一定期間、その地域に滞在して時間を共有する、あの取り組みのこと?」と思いながら傾聴していると、どうやら少し事情が違うようです。

今回は、糸魚川市が提案する新たなワーケーション、及び教育の形についてご紹介していきたいと思います。

親子ワーケーションとは

まずは、糸魚川市が提案する親子ワーケーションとは何かということについてお話していきます。
小学生のお子さんを持つ親子を対象とした事業(2022年12月現在)で、糸魚川市に一定期間滞在し、子どもは地元の小学校に体験入学、保護者は宿泊施設等で仕事をするといった内容となっています。

資料提供:糸魚川市

ここまでだと、他の地域でもやっていそうだなと思われるかもしれませんが、糸魚川市の親子ワーケーションは何と、通年で実施されています。

資料提供:糸魚川市

1学期から3学期までそれぞれの学期で1週間程度、同じ親子の受け入れをしています。国内でも、なかなか珍しい事例ではないでしょうか。

1年を通して関わることによって地域の人々との交流も深まり、サードプレイスとしてのニーズも高まります。「ただいま」と言える場所があるって、素敵なことですよね。利用される親子と受け入れる地域の両者に、メリットが感じられる取り組みだなと感じました。

導入の背景

次に、このような親子ワーケーションがなぜ導入されることになったのかということについてお話していきたいと思います。導入の背景にはいくつかの理由がありますが、その中で最も大きな割合を占めていたのは糸魚川市の人口減少です。特に今年度の受け入れ先となった根知地区の人口の推移は深刻なもので、小学校では複式学級が導入されるほどです。

複式学級とは二つ以上の異なる学年を一つにして編成した学級のことで、1・2年生、3・4年生、5・6年生がそれぞれ一つの教室で生活を共にします。「授業はどうするの?」と思われるかもしれませんが、2年間かけて2学年分を学んでいく形となります。国語や算数など各学年での対応が必要となる場合は、担任を持っていない先生が入ったり、それが難しい場合は兼任で(クラスを前後にわけて)授業をされているのだそうです。

そのような背景から、関係人口の拡大や定住の促進、地域の活性化を目的とした事業として、親子ワーケーションの導入を検討。令和3年度からモニターツアーの実施が始まり、令和4年度から本格的に導入を開始しました。

親子ワーケーションの流れ

概要について理解したところで、実際の親子ワーケーションではどのような体験ができるのか…
親子の1日に密着してみました。

スクールバスに乗って登校

滞在先の宿泊施設まで、バスが迎えにきます。そのスクールバスに乗って、小学校へ向かいます。

滞在先のホワイトクリフ
お子さんを見送った後、保護者はそのままお仕事に

②体験入学

地元の子どもと一緒に、小学校で勉強します。

令和4年度の受け入れ先 根知小学校
初めは緊張気味です

授業は、受け入れ先の小学校に合わせて展開されます。(教科書は市で用意してくださるそうです)授業範囲も普段通っている学校と異なる場合が多いため、参加の際にはその点を理解して申し込みをする必要がありそうです。

普段の学校の授業が遅れるのでは…と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、送る側の学校が欠席の分のプリントを用意するなど何かしらの対応をとることもあります。

③放課後は、近くの山で雪遊び

注:南能生小学校で実施したモニターツアーの様子

放課後は、地域の方と一緒に雪遊び。「こんなたくさんの雪見たことない!」と雪国ならではの遊びを楽しみました。

親子ワーケーションのこれから

今回は、糸魚川市の特徴的な親子ワーケーションの取り組みについてお話させていただきました。このような取り組みが行われていることに、私自身も驚きました。

まだ始まったばかりの事業ということで、次年度に向けての改善点がいくつかあるとお話されていましたが、こういった教育の形も今後必要になってくるのではないかと私自身は感じました。

これからは、より多様性が求められる時代となってきます。一つの場所や一つの物事に集中して取り組むということも大切ですが、様々な視点から多角的に物事を見る力も今後はより大切になってきます。

これは私の体感となりますが、そういった力を机上で学んでいくことは難しく、体験や経験を通して自分の中に蓄積していく必要があります。小学生という多感な時期に、普段とは異なる環境に身を置いて生活を営むことは、子どもにとって良い経験や学びに繋がるのではないかと思いました。

教育の新しい形としても注目を集めている、糸魚川市の親子ワーケーション。
次年度の募集は、5月くらいに開始される予定だそうです。気になる方は、糸魚川応援隊にご登録いただくか(市からお知らせのメールが届きます)、糸魚川市のH Pをチェックしてみてください。

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